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岡山家庭裁判所高梁支部 昭和32年(家ロ)2号 審判 1957年12月10日

申立人 江島郁郎(仮名)

相手方 大沢タマ子(仮名)

主文

一、相手方は申立人に対し別紙調停条項第三項の慰藉料中昭和三十一年十二月二十日限り支払うべき金一〇、〇〇〇円を次のとおり分割して岡山家庭裁判所高梁支部に寄託して支払うこと。

昭和三十二年十二月二十日限り金二、〇〇〇円

昭和三十三年一月以降八月まで毎月末限り金一、〇〇〇円宛

二、手続費用は全部相手方の負担とする。

理由

本件申立理由の要旨は、相手方(旧氏名江島タマ子)は昭和三十一年八月九日成立した当庁昭和三一年(家イ)第二四号離婚等調停事件(調停条項は別紙記載のとおり)において申立人に対し慰藉金一〇、〇〇〇円を昭和三十一年十二月二十日限り当裁判所に寄託して支払う旨約したに拘らず未だこれを履行しないので相手方に対するこれが履行命令を求める、というにある。

よつて検討するに、申立人と相手方間に申立人主張の如き調停が成立したことは当裁判所に明白な事実であり相手方本人審尋の結果によると相手方は申立人主張の如く債務を履行していないこと並に相手方は申立人と離婚後製箸会社に工員として勤務するようになつたが一ヶ月の収入は平均して金三、五〇〇円を上らずしかも間借り代に一ヶ月金八〇〇円を出費し他にいうべき財産もなく所謂食べるのがやつとの生活を続けているため前記債務を履行していない事実を認めることができる。

勿論一且有効に成立した調停条項はこれを誠実、確実に履行する義務があるのであつて、充分な収入がなかつたことを理由に調停条項所定の支払を滞ることは許されるべきことではない。しかし相手方は審尋の際主文第一項掲記の如き分割支払ならばこれを誠実に履行したい旨陳述するので今回は特にこの点を考慮しそのとおりの命令を出すこととした。

いうまでもなく、本命令は先に成立した調停条項の内容を何等変更するものではないから昭和三十二年以降の債務についても当然本命令同様の措置を受け得るものと考えてはならない。相手方は調停条項を忠実に履行するよう努力することを切望する。

尚この命令に従わないときは過料の制裁を科せられることがあるから注意しなければならない。

(家事審判官 村上明雄)

(別紙)

調停条項

一、申立人と相手方は本日限り離婚すること。

二、申立人において長男義一、二男謙二の親権を行い且つその監護養育をすること。

三、相手方江島タマ子は申立人に対し慰藉料として金一〇万円を昭和三十一年以降昭和四十年迄毎年十二月二十日金一万円を岡山家庭裁判所高梁支部へ寄託して支払うこと。

四、相手方田村定雄は申立人に対し慰藉料として金五万円を昭和三十一年九月九日迄に岡山家庭裁判所高梁支部へ寄託して支払うこと。

五、双方は本調停条項に定めたる以外に名義の如何を問わず何等の請求をしないこと。

六、調停費用は各自弁のこと。

以上

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